りんご大学ロゴ画像

タイトル画像

第99号 年末年始の近況報告とアザラシウォッチング

3月に入り、スウェーデンでは新型コロナの感染流行が始まってから1年が経ちましたが、多くの人々にとってはまさかパンデミックがこれ程までに長引くとは思ってもいなかったと思います。近日では更に4月前後に第3波が訪れるのではと、注意もされている状態ですから、まったく一昨年前には予想もしていませんでした。それでもこの1月から当国ではワクチンの接種が始まり、現在までに人口の約1割以上の人々、高齢者を中心に、介護者及び病院で働いている医師、看護師を優先に接種され、連日ワクチン不足と騒がれつつも感染者が少しずつ減少してきて、何となく春の訪れと共にずーっと遠くにようやく明かりが見える気がしている昨今です。

我が家族では、昨年の11月始めに、中部スウェーデンに住み、病院で働いている三女とボーイフレンドが感染しましたが、幸い1~2週間で回復しホッとしました。そこで家内が「一度感染すれば免疫になるので、12月のクリスマスには会えるね…」との話しで、恒例のクリスマスを田舎の我が家で祝うことにし、12月21日に家族全員が集まりました。新型コロナの影響で、皆会話にも今少し元気がなかったのですが、チビ達のワンパクな姿を見て皆微笑み合い、食事会の後はクリスマスプレゼントの交換、そして翌日には、小さい子供達がいる2家族は早々に家路へと戻っていきました。

我が家のクリスマスツリー
我が家のクリスマスツリー

その後、大晦日寸前の12月終わりに首都ストックホルムに住む長女家族から連絡があり、新型コロナに感染したとの事、チビ達2人を含め家族全員自宅待機となり、「お爺ちゃん、お婆ちゃんは大丈夫…?」との電話連絡でした。幸い我々は全く症状も無く元気だったので、「大丈夫だよ…」との返事をし、そして2週間後には長女から平常に戻ったとの連絡が入りホッとしました。

新年に入り三女達は2月に新型コロナの予防接種を受け、長女家族も既に一度感染免疫になっているので、後は次女、長男達の事が今少し心配でした。もっとも、それ以上に子供達にしてみれば我々シニアグループが心配なのではとも思いました。

昨年から新型コロナの影響で生活様式が変わり、首都に住む長男、長女に限らず、当地の役所で働いている家内も、この1月からはほとんど自宅からの仕事です。筆者も昨年春以来ほとんど全ての会議やミーティングはソーシャルメディアを利用し、画像を見ながら自宅からの参加でした。特にこの2月3月は政治の方では予算や活動計画の決定などがあり、家内とは別の部屋でそれぞれの仕事、会議に参加していました。子供達との電話やビデオ通話とは異なり、会議やミーティングでは冗談も言えず、画像や音声に注意しながらの話し合いで、直接のコンタクトも出来ないので今少し寂しさも感じたりもしている日々です。

近所の人々との会話も同じで、塀越しに声を掛け合う程度で、またスーパーへ買い物に行ってもどこか皆ビクビクしている様で、顔も少し強張っている様にも感じました。

人間の世界とは異なり、この冬も動物の世界では新型コロナとは関係無く元気そうです。1月下旬にスウェーデン南端にある、乗馬大会やゴルフで有名なファステルボー(Falsterbo)郊外の自然保護区へ、アザラシを見に行って来ました。長女から野生のアザラシが冬の間だけ見られると聞かされていて、ちょうど1月下旬に長女と2人の孫達が訪れて来たので、皆で元気をつけようと、家内と共に大人3人、チビ2人で車を南へと走らせました。ファステルボーの駐車場では南スウェーデンのルンド市に住む次女と2人の孫達と合流しました。行く前に自然保護区では海岸を4キロ程歩くことや、その上海の風は強く冷たいので防寒服を十分に着用すること、また乳母車も砂場で使えないから小さい子供連れは注意する様にと解説書で読みました。大丈夫かなと心配しつつも、折角ストックホルムから長女達が訪問してきたので、皆で元気に歩きだしました。

しっかり防寒着を着ていざアザラシウォッチングへ
しっかり防寒着を着ていざアザラシウォッチングへ

アザラシが生息している自然保護区、モークレッぺン(Måkläppen)はスウェーデン南端の町、ファステルボーのゴルフ場の南にあります。一面砂浜の海岸で、かつては島だったため歩いては渡れなかったのですが、長年の風と波の影響で島と陸続きとなり見学が出来る様になりました。もっとも、解禁は11月1日から1月31日までの3ヶ月間だけ、普段はアザラシと共に野鳥保護のため、立ち入り禁止となっています。2人の娘達、つまり母親達はまだ1歳にならない下の子をそれぞれおんぶし、3、4歳の上の子達は海岸に流れて来た棒などを拾いながら歩き出しました。

1キロ程歩き、まずは休憩も兼ね昼食会、手製のパンケーキと温かいブルーベリーのジュースを飲み皆で元気をつけました。それでも更に1キロ程歩いた頃にはさすがに娘2人の次女家族はギブアップ、家内と共に駐車場へと戻る事になりました。長女の方は男子2人だからでもありませんが、2度程ストックホルムマラソンを家内と走っているスポーツマンで、上の男の子も負けず嫌いなのか更に歩き出しました。帰り道には日が沈むのではとも恐れつつ、また本当にアザラシが見られるかなとも心配しつつ、冷たい風の中を私は黙々と先に歩いて行きました。

すでに見学者などほとんど見当たらず、広々とした砂浜のずーっと向こうの南端の海岸に、40匹程のアザラシが横たわっているのがようやく見えました。200メートル程遅れて来ていた長女達に携帯電話で合図し、やがて一緒になった長女と「寒い寒い」と言いながらも、スウェーデンで初めて見た野生のアザラシは、寒さなど気にせず集団でいかにも自然を楽しんでいると言う感じでした。少し海岸から離れた沖の方でも時々アザラシの頭が飛び出し、いかにも楽しそうでした。アザラシは体重が2~300キロあったのではと思われましたが、はう姿はまさに独特で時々はしゃいだり動き回っている姿が見られました。3歳のチビはアザラシよりも海岸で見つけた貝殻集めに夢中で、「スネッカ、スネッカ…(貝)」と不器用に手袋をはめた手で貝殻を拾っていました。

遠くに見えるアザラシの群れ 孫は貝殻拾いに夢中
遠くに見えるアザラシの群れ 孫は貝殻拾いに夢中

帰り道は少し薄暗くなりつつあり急ぎ足に歩き出しましたが、30分ほど歩いたところで暗くなり駐車場近くにある灯台の光を目印に、波の音を聞きながら黙々と歩きました。時々体重12キロ程の3歳のチビを背中に背負い、皆で励まし合いながら駐車場へと向かいました。チビが「ボート、ボート…」と、海の向こうに明かりの灯された船を指差し、綺麗だなとも思いました。

楽しそうにはしゃいで見えるアザラシ
楽しそうにはしゃいで見えるアザラシ

余談ですが、家内は自分も是非アザラシを見たいとの事で、1週間後、1月最後の日曜日に再度家内と2人でアザラシの見学に行きました。アザラシ見学ができる最後の休日ということで、前回とは異なり沢山の見学者で賑わっていました。風が冷たく立ち止まって見学する程度でしたが、今回はまだ午後の早いひと時で、アザラシもはしゃぎあっているように感じました。保護区の職員かと思われる若い男女の2人が時々、アザラシには近づかない様にと注意していました。「役人ですか?」と声をかけてみたら「ボランティアですよ」との返事で、いかにも自然保護者の様な雰囲気でした。「寒くて大変ですね、明るい色のアザラシがポツンといるけど、子アザラシですか?」と聞いてみたら、「そうですヨ、人が多いから親アザラシが近づけないのですよ…」との返事。「もう1月も終わりで閉鎖だから良かったですね」と別れました。

子アザラシ
子アザラシ

自然保護協会スコーネホームページ https://skane.naturskyddsforeningen.se/maklappen/

2021年4月8日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰

バックナンバー

プロフィール

工藤 信彰
Nobuaki Kudo

1949年弘前市生まれ。大学時代に3年程休学し、ヨーロッパを旅したことがきっかけで、大学卒業後スウェーデンに渡る。スウェーデンにてルンド工科大学を卒業し、一般企業へ就職するが、経済学を学ぶため退職しルンド大学経済学部へ入学する。卒業後は1990年~2015年までマルカリド市役所勤務。マルカリド市議会議員(2006年~2018年)を経て、現在は環境党マルカリド党首及び、クロノベリ県議会執行役員を務めている。

新着情報

〈新ブログ一覧〉
〈旧ブログ一覧〉

海外のウェブサイト

繁体中文簡体中文English

りんご大学からのおすすめ

Page Top