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vol.10 潮香る、ふるさと景趣

青森県では、一年中おいしいりんごが食べられると全国的に知られていますが、真夏の間はいったん身を引き、ほかの果実に店頭の特等席を譲ります。代わりに、甘みと果汁をたっぷり蓄えたスイカやメロン、モモやブドウなどがずらりと並び、多くの品種でにぎわいます。

「りんごや米の収穫前の収入源として、農家が栽培を始めたんだよ」と、地元の人が教えてくれましたが、そう表現するのはもったいないくらい高品質で驚きます。

例えば、メロンを切って

「これ、地物なんですよ」とお出しすると、

「本当に?すごく甘いから北海道のかと思った!」などと称賛する人は少なくありません。

今夏の訪問時にはメロンを持参しましたが、県外の人にとても喜ばれました。育てる人と土壌が豊かであれば、どんな作物もおいしく実るのだなあと、うなってしまいます。

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そんな津軽の夏は短く、瞬く間に過ぎていきます。

小学校が夏休みの間、息子はなわとびの練習をすると決め、ダイエットも兼ねてランニングを始めた夫と一緒に、毎朝公園へ出かけていきました。そのかいあって、苦手だったなわとびが100回以上跳べるようになりました。(夫も10kgほどやせました!)

海水浴へ出かけたときには、シュノーケルをつけて鯵ヶ沢や深浦の海の中を散策。キスやフグ、ハゼやカニ、名前もわからない小魚まで、たくさんの生き物を見たり捕まえたりしているうちに、泳ぎも得意になりました。

締めくくりはキャンプ。デイキャンプでテント設営の練習をしてから、本番のお泊りキャンプへ。ペグ打ちやギアのお手入れにも慣れ、お手伝いしてくれる姿が頼もしかったです。

チャレンジがぎゅっと詰まった、初めてづくしの夏。少ない休みをフル活用して、超特急で過ごしましたが、まだまだ遊び足りませんでした。

昨年までは「幼児」で、何をするにも手を貸さなければいけなかったのに、季節を一つ越えるごとに、一人で考え、できることが増えていきます。健気に成長を遂げる子の不思議な力が、大人に感動や刺激を与え、家族の絆を一層強くしてくれます。おそらく、どのご家庭のお父さんお母さん方も、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。

魚に夢中の息子
魚に夢中になり、網を持ったまま潜り続ける息子。
深浦の海は透明できれいでした

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やりたいことを先延ばしにできない北東北の短夏に対して、夫の故郷である山口県は、春秋を含めると長く温かい陽気が続きます。多くのご家庭で、お盆には故郷へ帰ると思いますが、わが家では繁忙期と重なるために、時期をずらして帰省しました。季節はさかのぼって春でしたが、実に5年ぶりに実家へ帰ることができました。

同県の魅力はたくさんあるのですが、おいおいお伝えするとして、ここではバカンスのお話ついでに海の絶景を一つご紹介します。

この地の絶景スポットといえば、西部に位置する『角島』が有名です。角島大橋から臨む海のエメラルドグリーンは、一度見たら忘れられないほどの美しさです。そこから東に車を走らせると、長門市へ続きます。昨年行われた日露首脳会談で、プーチン大統領が宿泊したことでも話題になった、山峡の温泉地、湯本温泉がある場所です。

その少し手前から日本海側へ出ると、北長門海岸国定公園エリアに入ります。そこに、一押しの『元乃隅稲成神社(もとのすみいなりじんじゃ)』はあります。

SNSを通じて人気に火が付き、平成27年3月には、アメリカのニュース専門放送局CNNが発表した「Japan’s 31 most beautiful places (日本の最も美しい場所31選)」に、金閣寺や厳島神社と並んで選ばれた、いわゆるパワースポットです。今では、国内外から多くの観光客が訪れます。

昭和62年から10年間かけて奉納されたという123基の鳥居が、岸壁の景勝地『龍宮の潮吹』まで100m以上にわたり並びます。真っ赤なトンネルとなって続くさまは、訪れる誰もが驚嘆します。

参拝後、母が「商売繁盛の神様らしいから」と言って、お守りを買ってくれました。

私に手渡してくれましたが、自分たちの背中を見て料理の道に進んだ息子(夫)に対してなんだろうな、と思いました。

遠くから応援している気持ち。心配な気持ち。会えなくて寂しい気持ち。会えてうれしい気持ち。帰らないでほしい気持ち。ずっと一緒にいたい気持ち。

母の笑顔には、色々な思いが詰まっているように見えました。

実の親ではないけれど、そんな父や母が元気でいてくれる場所こそが、私にとってのパワースポットだと実感することができました。おかげさまで「よし!弘前に帰ってもがんばるぞ!」という気持ちになりましたよ。

夫の心の内は、どうだったのでしょうね。

高台から望む元乃隅稲成神社
高台から望む元乃隅稲成神社。日本海が青々と広がります

日本一入れにくいと言われるお賽銭箱
鳥居上部に注目!高さ6m「日本一入れにくい」と言われるお賽銭箱です。
何度かチャレンジして見事イン!入っただけで良いことありそう

海側から見た神社
海側から見た神社。鳥居もお社も崖に近いところにあるのがわかります

鳥居トンネルの中より
鳥居トンネルの中より。一つ一つくぐるごとに身が引き締まる思いです

お守り
母が買ってくれたお守り。旅の良き思い出です

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さて、山口でのパワー注入のおかげで、多用な夏を乗り切ったわが家では、いよいよ食欲の秋が始まろうとしています。

朝晩の空気がひんやりとし、秋の気配を感じずにはいられなくなったころ、りんご園では早生種が出始めます。弘前市りんご公園では、すでに収穫体験が始まっている模様です。

青森に来て、すっかりりんごのおいしさに魅せられた夫は、初物が店頭に並ぶや否や、我慢できずにさまざまな品種のりんごを買い求めてきます。仲良しの八百屋さんで選んできては、食べ比べる毎日です。

実りの秋がやってくると、今度は実家へパワーの恩返しです。

ことしはどんな品種を送ろうかな。その前に「毛豆」も食べてもらいたいなあ。あ!まずは「嶽きみ」を送らなくっちゃ!!

私の頭の中は、すでに津軽のおいしいものであふれています。

ある日の食べ比べ
ある日の食べ比べ。左から、きおう、つがる、サンつがる、未希ライフ。
この日のきおうは小さめでしたが甘かったです。未希ライフは爽やかな酸味が美味。
つがるは酸味も甘みも両者の中間くらいでした

2017/9/6

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プロフィール

上原 香織

盛岡市生まれ。土手町「鮨たむら」女将。出版社、広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。結婚、夫の転勤を機に弘前市に転居する。現在は夫婦ですし店を切り盛りしながら、青森のおいしいものを探索中。趣味は観光と登山。一児の母。
「鮨たむら」の店舗情報http://www.seijiro.jp/sushitamura/index.html

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