vol.13 しあわせ並ぶ、お菓子の指南書

日々は、ささいな出来事の積み重ねでできているなあと感じます。喜びだけでなく、怒りや悲しみ、ユーモアや挫折、慢心や反省……。誰かに話すほどではないけれど、小粒な事件たちが、私の前を行ったり来たり、ぶつかったり、転がったりしながら、過ぎていきます。

最近うれしかった、ささやかなことは、『ブラントン』というお酒のボトルキャップが、すべて集まったことです。知らない方にとっては、ブラントン?ボトルキャップ?すべて集まったってどういうこと?という感じですよね。

ブラントンについてお話すると、ケンタッキーの大自然が生み出した、アメリカを代表するバーボンウイスキーです。職場では、ウイスキーというと、このブラントンをお出ししています。水割りでもオンザロックでも、ご希望の飲み方でご提供しますが、このごろではソーダで割ってレモンを添えたものが特に人気です。

国際コンクールで入賞するような良質なお酒でありますが、これのすごいところは、作り手が一つ一つの作業に繊細なこだわりを持っているところです。

シングルバレルという言葉をご存知でしょうか。これは、単一の樽から瓶詰めされたお酒という意味です。スコッチがお好きな方には、シングルカスクというほうが耳になじんでいるかもしれません。日本で販売されているものではフォアローゼスや、バーボンではありませんが、ジャックダニエルなどもシングルバレルがあります。

通常、ウイスキーはボトル詰めの際、複数の樽の原酒を混ぜてから詰めます。原料や作る工程が同じでも、使用する樽には個性があるので、原酒は樽ごとに微妙に味が異なります。そのため、商品として味を統一させるために、原酒を混ぜてから詰める必要があるのです。

ブラントンは、原酒を混ぜないシングルバレルを採用しています。ただし、味にばらつきを出さないために、熟成期間中の管理に非常に手間がかかります。さらに、ボトル詰めの際には、厳しい基準をクリアした原酒のみしか採用されません。唯一無二と誇るのもうなずける、職人の技が生きたお酒なのです。

特徴として、もう一つ取り上げたいのが、ボトルデザインです。

手塩にかけただけあって、ラベルには蔵出しの日付、樽ナンバー、ボトルナンバーが手書きで記されています。八角形の球体をしたクリアな器には、燃える夕日を吸い込んだような、赤みの強い琥珀色が、鮮やかに映し出されます。

蔵出しの日付、樽ナンバー、ボトルナンバーが手書きで記されたラベル

ラベルには、「2018年1月2日」に蔵出し、樽番号「5」、「H」倉庫の「19」段目で
貯蔵されていたもの、アルコール分「80」プルーフ(40%)と記載されています
※「」が手書き部分

最も目を引くのは、ケンタッキーダービーのサラブレットのフィギュアを冠した、ボトルキャップです。デザインが8種類あり、競走馬の足元には「B・L・A・N・T・O・N’・S」の8つのアルファベットが刻印されています。順に並べると、スタートからゴールするまでの過程が現れ、コマ送りのように眺めることができます。見た目の美しさもさることながら、「勝利」という縁起の良さも相まって、贈り物にも喜ばれています。

話は戻りますが、この8種類のボトルキャップがすべて集まったのです。

専用のディスプレイスタンドをいただいていたので、ボトルが空くたびになんとなく貯めていき、まもなく7つそろったのですが、残りの一つ「A」だけにはなかなか当たりませんでした。購入時に自分でキャップを選ぶことはできないので、箱を開けたとき、どのアルファベットが出るかひそかな楽しみだったのです。この運試しを続けること約5年。やっと全種類がそろいました。

最後の「A」が出たとき、思わず「ィエー!」と諸手をあげたくなる興奮を覚えたのですが、誰にとも言わず集めていたので、しようもない雄叫びは喉の奥に飲み込みました。静かにコンプリートを迎え、並べてみたのが写真の様子です。

私は普段バーボンを飲みませんし、何かを収集する趣味もありません。もしあれば、キャップを目的に、先にお酒を買いそろえていたかもしれません。ただ、今回はうちの店に来るお客さまがワンショット、ワンショット、少しずつ飲んでくれたことが積み重なった証なのだと思うと、かけがえのないものに感じます。後からじわじわと、不思議なうれしさがこみ上げてきました。

揃いました!

ブラントンオリジナル8キャップススタンド。
誕生30周年を記念して作られたコレクターズアイテムです

象徴的なブラントンのボトルキャップ

象徴的なボトルキャップ。後ろの足元にアルファベットが刻印されています

小さな幸せ

小さな幸せ、まだあります。お友だちから地物のタケノコをいただきました!
家族のリクエストで天ぷら、炊き込みご飯、お味噌汁に。津軽の初夏のごちそうです

同僚からいただいたサクランボ

さらに、同僚からは自宅の果樹園で採れたサクランボをいただきました。
りんご園のマメコバチが受粉を手伝ってくれるそうです。マメコバチ、えらい!

お客さまとの出会いに関して言いますと、新年度を迎えてからもたくさんの観光客とお会いしています。外国から旅行に来る方も年々増えてきていますね。

ありがたいことに、桜まつりでにぎわうゴールデンウイークが終わっても、りんごやつつじ、菜の花などの花まつりや、奥入瀬や白神山地などの新緑まぶしい景勝地、雪解けとともに解禁になる秘湯など、初夏ならではの魅力を体感しに訪れる人を多く目にします。出歩くのに心地良い季節になってきたので、街歩きもドライブも快適です。バイクや自転車の群れにもよく遭遇します。

そんなわけで、幅広い年齢層の方がいらっしゃるのですが、時に「おすすめのおいしいものは何ですか」と尋ねられたときに、活躍するのが『弘前アップルパイガイドマップ』です。

弘前市内で販売されているアップルパイが、46種類(平成30年6月現在)掲載されています。商品が写真付きで載っているだけでなく、甘み、酸味、シナモンの量を段階評価した独自のデータも付いています。取扱店の営業時間や連絡先、広域マップやPRコメントまで添えられているので、初めての人でも好みのアップルパイを見つけやすいのが特徴です。

県産りんごのうまみが詰まったアップルパイは、おやつにもお遣い物にもぴったり。一個から買えますし、日持ちのするものもあるので、旅のお供や出張帰りの手土産にも人気です。

とはいうものの「あまりたくさんあるので、どれを選んでいいかわからない」と言われることもしばしば。そこで、弘前を訪れた方に少しずつお伝えできるように、改めてアップルパイの魅力に迫ってみることにしました。

一件目は、職場から近いのでご案内する機会が多い「パティスリーヴェルジェ(弘前市百石町)」です。

津軽りんごの代表格、ふじを使用しています。生地で具を包んでいるタイプで、中のスライスされた果肉は甘く、とろけるような食感です。冷めていても、バターの香りが強く立ち上ってくるところが特徴的です。

 紙でくるんであるので、手に持って、そのままいただくことができます。屋外や、お子さまと一緒に食べるときに良いですね。専用のギフトボックスもあるので、まとめ買いのときに便利です。

パティスリーヴェルジェのアップルパイ

ヴェルジェのアップルパイは、バターの香りが強いので、トースターで温めるとよりおいしいです。焼きたてサクサクの食感がよみがえります

次は、自宅からほど近い「パティスリーフール(弘前市早稲田)」です。実は、謝らなければいけないのですが、写真はパンフレットに載っているアップルパイではありません。ごめんなさい。つい、うっかり早稲田店限定の「早稲田アップルパイ」を購入してしまいました。同店には、2種類のアップルパイがあるのです。

こちらはパイというよりケーキに近い見た目です。銀紙のあしらいや、お行儀の良い立方体が、どこかレトロな雰囲気を醸し出しています。つやめく生地はしっかりとした厚みで果肉をサンド。この実のぎっちり感に気分が上がります。ソースの染みたスポンジがアクセント。りんごの酸味とのバランスがたまらない一品です。

パティスリーフールの早稲田アップルパイ

どの角度から見てもりんごがぎっしり。一つで満足の食べ応えです。
フール早稲田店限定です

今まで食べたもの、これから食べるもの、まだまだご紹介したいものがたくさんあります。少しずつピックアップしていきますね。

同マップは、弘前市の観光コンシェルジュが実際に調査した上で作成されたものであり、観光案内所で無料配布されています。内容は予告なく変更される場合がありますので、事前にお問い合わせの上お出かけください。

※弘前アップルパイガイドマップに関する情報はこちら


上原香織 プロフィール

上原香織

盛岡市生まれ。土手町「鮨たむら」女将。出版社、広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。結婚、夫の転勤を機に弘前市に転居する。現在は夫婦ですし店を切り盛りしながら、青森のおいしいものを探索中。趣味は観光と登山。一児の母。

「鮨たむら」の店舗情報
新しいウィンドウで開きます http://www.seijiro.jp/sushitamura/index.html

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