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功罪
2025.11.6
高密植栽培も5年目に入り、
だいぶ収量が見込まれるように実ってきた。
剪定は不要、早期多収の栽培方法という触れ込みでしたが、
初期費用の負担が大きく、
苗木の供給などもすんなりいかないため、
思った以上に普及していないように思う。
まだ懐疑的な意見も多いが、
今年の大雪をも乗り越えたのだから、
もう懸念点は少ない気がする。
そして剪定は不要というわけではなく、
丸葉栽培程の技術は必要ないという程度であるが、
りんごの木の理屈は同じなので
剪定技術があった方が断然良い。
りんごの味も良くできるだろうし、
経済寿命も長く出来る。
そもそも剪定とはそのためにあるのだから。
あとは個人的な、どう初期費用を準備するのか、
潅水のための水をどう確保するのか、
など、その他の部分を問題点と見ている人が多いように思う。
先日国会議員が夏の雨不足についてヒアリングにまわっていたが、
この高密植栽培には、やはり水が重要で、
水が準備できるのと出来ないのとじゃ、雲泥の差が出る。
ということをお伝えした。
とある高密植栽培の園地では、
水を汲むのに真夏に一人が専門で回って、
ため池から汲んで、ポンプでタンクへ移して
という作業を繰り返していました。
それでも全苗木に潅水することが
出来るか出来ないかだそうで。
これは結構キツい。
真夏の暑い日が続くと
出来ることなら毎日潅水した方が良いと思います。
そうなると、高密植栽培は剪定技術が不要で、
早期多収ですっていう言葉に、
「でも潅水は結構必要なので、水を用意出来るなら!」
という言葉も付け加えないと、おとぎ話になってしまう。
一度弱ったM9の台木の根っこはほぼ回復しない。
うちは植えて初年度の大雨で根が窒息して、
数年様子を見たが、やはり回復はしない。
やり始めた頃は
「意外と水をやらなくても、無ければ無いなりに育つ」
という話もあったが、
今となってはそうでもなかったと感じる。
やっぱり水はあった方が良いし、
水が無ければ木は弱ってしまう。
丸葉の苗だって死ぬじゃないか。
井戸を掘るにはギャンブル的な要素が多い場所もあるそうだ。
うちの地域は河川が近いためか、
比較的掘れば出やすいようで、
井戸は至る所にあり、
当園地にも共同防除組合の井戸があります。
しかし山手の園地だと井戸を掘るにも数百万、
そしてそれだけ掛けても出るか出ないかは運次第だそうだ。
山手がそういう事情だということを今まで知りませんでした。
そうなると水源を持っていたり、
水を自由にできる環境にある園地が、
高密植栽培に向いているということになると思います。
小規模であればスピードスプレヤーなどで水やりというのも良いので、
自分の園地の環境が高密植栽培に向いているのかというのは、
慎重に考えた方が良いかと思います。
最近SNSでも高密植栽培についての質問のDMが来ますが、
メリットデメリットはお伝えしています。
今年の夏のような干ばつがあると、、、
高密植栽培が全ての人に合っているとも思わないし、
これが必ずしも良い栽培方法と決めつける気はさらさらない。
高密植栽培の功罪の検証はこれから始まると思う。
PROFILE
会津宏樹のプロフィール
板柳町のりんご農家(アルファーム)。
22歳の時に祖父の跡を継いで70aのりんご畑からスタートし、現在2.4ha。
全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)63代目会長、
農水省の働き方改革委員や西北五地域活性化委員も務める。
4Hクラブの研修で長野県に行った時に、高密植栽培を見て興味を持つ。
現在農業に興味のある県外の大学生のファームステイを受け入れており、
りんごの現場を体験させたり、青森を知ってもらう活動をしている。
