会津宏樹の
りんご高密植栽培日記

制御
2023.8.8

うちの高密植栽培の園地は、
沖積土壌地で水はけが良いとは言えない場所です。
昨年の大雨でそれが顕著に表れて、
根が弱いM9が湿害による窒息が原因で
8本枯れてしまいました。
一昨年植えたものが3本、
昨年植えたものが5本。

これからもっと増やして行くとなると、
水を流すための暗渠が必要かなと感じました。
水はけが良いとモンパ病の悩みが出るし、
水はけが悪いと湿害による根の窒息がある。
土地によって対応策が変わっていくと思います。

今年に入って大雨の次は大雪。
20年近く前の大雪ほどではないようですが、
高密植の園地のある場所では120センチまで積もりました。
こうなると雪が融ける時に下に引っ張られて
枝が折れる危険性が出てきます。
枝が折れると樹勢のバランスが崩れたり、
そこから病気の侵入の恐れや、
収穫量が減るということが予想出来ます。

わい化栽培をされている農家さんは
枝の周りにある雪を掘って
枝を救出している方がいらっしゃいますね。
想像しただけで吐き気がするのですが、
今年は自分もその枝の救出をしてみました。

いやー、キツイ。。。
掘ってみるとわかりますが、
もう既に折れているところもあり、
雪が降るたびにやるのが一番良いのはわかりますが、
ちょうど良い落としどころを考えて、
一回だけで済ませたいと思ってしまいました。
それだけキツイ。
5列中4列掘ってくん炭を撒いて、
1列はくん炭を撒くだけで終わりました。

結果ですが、掘らなかった方が
なぜか枝折れが少なかったです(笑)
くん炭のみでも今年は良かったようですね。
試験栽培の方々の枝折れの状況を聞くと、
自分が一番被害が多かったようで・・・
せっかく枝を掘ったのに・・・(笑)

しかし折れすぎて悲惨だなーという木はなく、
コントロール可能なレベルだと思います。
折れた本数、60本・・・はぁ・・・(苦笑)
大丈夫ですよ、ホント大丈夫(笑)

それでも枝を掘ったことがあるということが
いつかさらに雪が積もった時の対応に繋がりますよね。
知識があるのと、やったことがあるのとは、
大きな違いがあると思います。

農業をやってて思うことの一つに、
農業って自然なことっぽいように見えるけど
ホントは植物にとっては不自然なことだということ。
りんごが大量に植えられていることも不自然だし、
剪定も摘果も収穫もりんごにとっては
不自然なことなんですよね。
高密植は不自然の極みかもしれません。

その不自然なことに対しては、
さらに不自然なことをしないと、
不都合が出ると思うのです。
もしも植物にとって自然なことを目指すならば、
人間は寝そべってそのまま地球に還ることが理想でしょうね。
しかしそれは自然への敗北だと私は思います。

どこかで聞いた言葉に

「技術は矛盾の克服」

というのがあります。

りんご栽培の技術は長年に渡って
先人たちが幾度も失敗しながらも
その不自然さを克服して時代に合わせて
稼げるように編み出した科学の結晶だと思います。

高密植の弱点である根っこの弱さも枝折れも、
自然に任せちゃ恐ろしい被害が出ます。
自然ってのは良いように聞こえますが、
人間にとっては脅威だし、恐ろしいものです。
生物にとっての最大の敵は自然でありこの地球。
生物は進化を繰り返し、
ようやく自然に対抗できる代表を作った。
それが人間です。
人類に与えられた使命は
この自然を支配し制御することだと、
小学校の時に読んだ漫画に
そんな風なことが描いてありました(笑)
自分の考えではないです(笑)

この高密植栽培という行き過ぎた不自然さと、
行き過ぎた自然の驚異に対して人間が出来ること。
自然には勝てないかもしれないけど、
負けないように生きていかないと。
農業をしているとつくづく思うのです。

PROFILE
会津宏樹のプロフィール

板柳町のりんご農家(アルファーム)。

22歳の時に祖父の跡を継いで70aのりんご畑からスタートし、現在2.4ha。

全国農業青年クラブ連絡協議会(4Hクラブ)63代目会長、
農水省の働き方改革委員や西北五地域活性化委員も務める。

4Hクラブの研修で長野県に行った時に、高密植栽培を見て興味を持つ。

現在農業に興味のある県外の大学生のファームステイを受け入れており、
りんごの現場を体験させたり、青森を知ってもらう活動をしている。

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