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第2号 現代に受け継がれる野外市場

12月も間近、1年が過ぎるのも早いものですね。日に日に日照時間が短くなっている北欧は、クリスマスの足音が聞こえてきそうなこの時期、何となく商店街も活気付いてきつつあります。今回は北欧の町々でよく見かける、野外市場(Torghandel)について綴ってみましょう。

ヘッセルホルム広場のクリスマスツリー
ヘッセルホルム広場のクリスマスツリー

Torg(トリエ)とは、市場と言うよりも街の中心部にある広場のことを指します。スウェーデンの場合、中世期からの名残で、ほとんどの町や村の中心部には、石畳等の広場があります。広場前には市庁舎や教会、博物館等の古い建物が存在し、商店街がまだ発展していなかった中世には、この広場で、地方や田舎からの青果物、精肉などの食品に加え、衣類など生活に必要な雑貨類が売られていました。

ヘッセルホルムの町通り
ヘッセルホルムの町通り

現代では自動車社会が発達したことで広場が駐車場化したり、市民憩いの公園等にしている所もありますが、それでも今も多くの町々では歴史ある野外市場が多数開かれています。現代の野外市場では野菜や果物、花き等が中心に販売され、都会の大きい市場では衣類や革製品等も売られています。

当地マルカリドの様に小、中規模の町では、市場は毎日でなくせいぜい週1回か2回と決められていて、その日には露店がいくつか現れます。夏場は暖かいので、市民の心もウキウキとして、広場にも人が集まり易いのですが、秋から冬ともなると寒いので大変です。寒さの影響からか、10月頃まであったマルカリドの野外市場が11月に入ると急に無くなり、がらんとした感じになりました。クリスマスを控えた12月は2~3週間は市場が再開されるとは思いますが、それまでちょっぴり寂しい気がします。

市場に出店していた花屋さんの店員 オーサ(ÅSA)さん
市場に出店していた花屋さんの店員 オーサ(ÅSA)さん

首都ストックホルムの野外市場は、毎年ノーベル賞授賞式が行われる外壁が青色のコンサートホールの正面広場で日曜日を除いて毎日行われています。ストックホルム中心部にある周りの大きい建物とは対照的に、庶民的で一見すると野暮な感じさえする野外市場です。市場のすぐ隣は地下が大市場となっていて、そこでは魚介類や精肉、野菜、香辛料、お菓子を売る店舗、酒屋があります。さらにそれらの新鮮な食材を使った飲食店で場内は大変込み合います。寒い冬には外の野外市場と対照的に、厚着をした人々の熱気とお店の活気により、湯気で眼鏡が曇ってしまい、まるでラッシュアワーの電車に揺られているような感じです。

ストックホルム コンサートホール前の広場
ストックホルム コンサートホール前の広場

一方、野外市場では寒さにも負けず、売り手が声を嗄らしながら「美味しいリンゴだよ!」「スウェーデンのキノコだよ!」「今日は特別安いよ!」等と盛んに叫んで、客引きをしています。物売りが多く、特に果物売場ではアラブ系の移民が目立ち、その独特のなまりが印象的です。おそらく中近東の人達はお互いにつながりがあると思うのですが、商売上手というか、販売に慣れている印象を受けます。

ウプサラの町 露店市の様子
ウプサラの町 露店市の様子

昨年、首都ストックホルムから約80キロ北上した古い大学街ウプサラ(Uppsala)に行く機会がありました。ウプサラ中央駅前に新築した会議センターで行われた会議に出席した際、その屋上5階から裏側を見下ろすと、何と広場で露店市が開かれていました。露店市というよりも骨董市、ボロ市(失礼な書き方ですみません)と言う印象で、中古の服や玩具、家具などがあちらこちらの露店でたくさん売られていました。ウプサラでは一週間に一度、決まった週日に露店市が開かれている様です。

マルメ市広場
マルメ市広場

こちらの写真はスウェーデン第3の都市、南にあるマルメ市の広場での様子です。この写真は真夏のマルメ祭の時のもので普段とは異なり、露店がいっぱいでした。

このようにスウェーデンでは、それぞれの町で中世代そのままといかないまでも、現代風に留めた野外市場があちこちで開催されています。昔の名残が今も続いているのですね。

さて、今回はここまで。次回は12月、クリスマスについて書いてみます。

2011年11月30日
スウェーデン在住、弘前市出身、工藤信彰

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プロフィール

工藤 信彰
Nobuaki Kudo

1949年弘前市生まれ。大学時代に3年程休学し、ヨーロッパを旅したことがきっかけで、大学卒業後スウェーデンに渡る。スウェーデンにてルンド工科大学を卒業し、一般企業へ就職するが、経済学を学ぶため退職しルンド大学経済学部へ入学する。卒業後は1990年~2015年までマルカリド市役所勤務。マルカリド市議会議員(2006年~2018年)を経て、現在は環境党マルカリド党首及び、クロノベリ県議会執行役員を務めている。

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