りんごと栄養

「An apple a day keeps the doctor away.(1日1個のリンゴが医者を遠ざける)」というイギリスのことわざが広く知られているように、りんごは栄養価の高い食材として世界中で古くから親しまれています。

特筆すべき栄養成分と言えばポリフェノールです。りんごを切ってしばらく経つと、切り口が茶色く変化した姿を見たことがあると思います。これがポリフェノールの正体です。ポリフェノールが空気中の酸素に触れることで起こる現象なのです。ポリフェノールには、強力な抗酸化作用が期待されています。

私たちの体の中で発生する活性酸素は、通常、体内に侵入してきた外敵と闘い、身を守る働きがありますが、大量に発生すると余った活性酸素が私たちの体に結びついて攻撃をします。これを酸化と言い、老化を加速させたり、癌や動脈硬化をはじめとする生活習慣病、認知症、骨粗しょう症など様々な病気の一因になることが分かっています。活性酸素は紫外線やストレス、大気汚染、喫煙、食品添加物等で発生しますので、今の私たちは活性酸素が大量に発生する環境に身を置いています。活性酸素を取り除く働きのある抗酸化成分を摂ることが、老化や病気を予防し、健康的な生活を送ることに繋がるのです。りんごのポリフェノールは強力な抗酸化作用があることで、大変注目を浴びています。

また、食物繊維が豊富なことも、りんごの嬉しい成分です。ジャムやコンポートを作るとトロっとしたゲル状になることに気付かされますが、これが水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は、血糖値の上昇を緩やかにしたり、血液中のコレステロール値を低下させる働きがある等、生活習慣病の予防効果が期待されていたり、善玉菌の餌となって腸内環境を整える働きも期待できます。また、便秘予防、大腸癌の予防効果などが期待される不溶性食物繊維も豊富です。りんごをかじって、シャクシャクとした食感が生まれるのも食物繊維が豊富だからこそ。歯ごたえのある食感があることで、咀嚼回数も増えますので、咀嚼による健康効果も期待できます。

その他にも、余分なナトリウムを排泄して血圧を下げる働きのあるカリウム、抗酸化作用のあるビタミンC等、様々な栄養成分が含まれており、健康や美容のためにも積極的にとり入れたいりんごですが、1日に何個食べるのが良いのでしょうか。厚生労働省では、果物の目標摂取量を1日200gとしています。りんごで換算すると約1個が目安になります。りんごに含まれているポリフェノールやビタミンCは、体内にとどまっている時間が2~4時間と短いため、食後やオヤツなど「こまめに食べる」のがお勧めです。

気になるエネルギー(カロリー)ですが、可食部100g(約1/2個程度)当たり53kcalとヘルシー。食物繊維や水分も豊富なため、満腹感も得られやすいのも嬉しいですね。また、熟すほどにリノール酸やオレイン酸が増え、これらが皮に含まれている固形物質を溶かすことで「油あがり」と呼ばれる現象が起こり、皮に油を塗ったような美しい艶が出ます。これは、体にとって必要な栄養成分の一つ。皮にはポリフェノールも豊富に含まれていますので、是非、皮ごと食べていただきたいものです。りんごのある食卓で、健康的に過ごしましょう。

2021/12/17

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