日本産りんごと台湾の甘い関係
台湾に住んでいる時はアメリカ産の酸味の強いりんごを多く食べていましたが、日本に移住して、スーパーに置かれているりんごの種類が季節ごとに変わっていくことに驚きと憧れを感じました。
フルーツ消費大国――台湾
温暖な気候から安価にバリエーション豊富なフルーツが手に入る台湾では「食べない日はない」と言っても過言ではないほどフルーツは食卓に欠かせない存在です。
入手ルートが見つかれば、自分の好きなフルーツを産地から直接定期購入したり、友達や親戚と一緒に大量買いしたりするのも台湾でもよく聞く話です。
また、台湾国産フルーツだけでなく海外からの輸入フルーツも多く市場に流通しています。
◎台湾国内輸入フルーツ統計2017-2021 | |
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出典:台湾 行政院農業委員会 |
輸入フルーツの中では、特に「りんご」が人気で、平均年間45万トンの総輸入フルーツに対し、ほかの輸入フルーツと比べ飛び抜けて多い15万トン前後の輸入量をキープしています。
国別で見るとアメリカ、チリ、ニュージーランド、日本などから輸入されていて、一般的にアメリカ、チリ、ニュージーランドのりんごは安価、日本のりんごは品質が高いことから高値で取引されています。
また、秋冬は主に北半球のアメリカ、日本産りんごが出回るのに対し、南半球のチリ、ニュージランド産りんごが春夏に市場に出回ることで、一年中りんごの安定供給されるようになっています。
写真は台中にある高級スーパー「裕毛屋」(ユーマォウー)のフルーツ売り場の様子です。
日本からの直送で生鮮食品を多く取り扱っていることで近所の富裕層に大人気です。
ますます豊かになってきた台湾の日本産りんご事情
以下2枚の写真は、2022年1月に撮影した「カルフール」(国内に約130店舗展開している大型スーパー)のフルーツコーナーの様子です。(Photo by @ Chungkun Lu)
アメリカ産りんごが「富士」1個で22元(日本円で約88円)で販売しているのに対し、日本産のりんごは「王林」「陸奥」など品種別に1個40元近い価格(日本円で約160円)で販売されています。
このようなブランド化されたりんごは私が日本に移住する前(15年前)は高級スーパーでしか販売していなかったが、現在は一般的なスーパーでも販売されるようになりました。
続いて、よりリアルな台湾の声を皆さまにシェアすべく、私の周りにいる台湾在住の友人ら80人に輸入日本産りんごについてヒアリングしてみました。
◎講到日本蘋果、你第一個印象中的產地是哪裡?(問卷回覆件數80) | |
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「日本産りんごといえば、まずどこの産地を思い浮かべますか?」という設問に対し、約98.8%の方が「青森県」と答えました。
青森県が台湾市場に対しての積極的なPR活動が影響されているかもしれません。
写真は2022年1月に撮影した「全聯スーパー」(国内に約1,000店舗展開している一般的なスーパー)のフルーツコーナーの様子です。一例ですが、よくこのようにコーナー展開をして販売されています。
◎對於台灣國內販售日本蘋果品種、您對哪些品種有印象?(問卷回覆件數80) | |
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「台湾国内で販売されている日本産りんごの品種について、印象のある品種をお答えください」といった質問(複数選択)に対しては、長年台湾に輸入実績のある「富士」が一番強く残ったほか、近年輸入されるようになり、インフルエンサーの間でも宣伝されてきた「王林」「トキ」もファンがつくようになりました。
少しずつ注目される台湾産りんご
もちろん、台湾国産りんごも黙っておりません。ここ数年、台湾台中市の梨山エリアにある標高2,000メートル超の「福寿山農場」にて温帯フルーツのりんご生産も始まっており、10月〜11月に収穫されたものが、スーパーで買えるようになりました。
写真は2022年1月に撮影した全聯スーパーの様子です。まだまだ価格面での競争力は足りませんが、新型コロナの追い風もあり、「国産りんご」と「農場体験」の打ち出しでここ1〜2年話題になりつつあり、台湾国内りんご市場の変化もこれからが楽しみです。
2022/2/3
謝 チイ
読み方:シェ チイ
文化翻訳家 / 野菜ソムリエ / 農泊専門家
日本移住歴 15 年。台湾・東呉大学日本語学科卒業後、日本メーカー、Web広告代理店、日本国内輸入商社などドメスティックマーケットを10年以上経験し、2015年に日台コミュニティブランド「Breathe TOKYO」を立ち上げ今に至る。「食を通して、日本と台湾の架け橋になりたい」を目標に活動している。
●ホームページ www.breathetokyo.jp