アップルパイと薬膳

前回の記事では、りんごの薬膳についてご紹介させてもらいました。
今回はりんごスイーツの筆頭格「アップルパイ」を薬膳の観点で分解してみます。

藤田記念庭園・大正浪漫喫茶室ではアップルパイの食べ比べができる!

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オーソドックスなアップルパイの材料といえば、
パイ生地(小麦粉、バター、塩)と、りんご、砂糖、シナモン。
それぞれの薬膳的機能を簡単にご紹介します。

小麦 涼性。心の鎮静にも役立つとされる食材。
冷え性ではなく、頭がカッカしやすい方におすすめです(笑)
バター 平性。からだの内側から潤すとされる食材。
乾燥による便秘や乾燥肌が気になる方に。
寒性。からだの内側から冷やし、解毒作用も期待される食材。
熱を持った腫れ物や痒みが気になる方に。
りんご 平性。消化器系を健康に保ち、からだを潤すとされる食材。
おなかの調子が悪い時やから咳などが気になる時に。
砂糖 ・白砂糖:涼性。から咳が気になる時や二日酔いに。
・グラニュー糖:平性。乾燥や疲労が気になる時に。
・きび砂糖:平性。乾燥が気になる時、カッカしている時に。
・黒砂糖:温性。冷えによる月経痛や疲労回復に。
シナモン 熱性。からだを温め、血流を促す働きがあるとされる食材。
からだの末端の冷えや血行不良による薄毛が気になる方におすすめです。

(参考文献:薬膳食典 食物性味表)

パイ生地のベースとなる小麦粉は「涼性」ですが、その性質は調理によって緩和させることができます。からだの冷えが気になるけれどアップルパイが食べたい!という方は、オーブントースターや電子レンジなどで温め、ホットアップルパイにしていただきましょう。

ご自分でアップルパイをつくる方は、小麦粉を米粉(平性)に置き換えてみたり、りんごを煮る時の砂糖を黒砂糖に変えてみたり、シナモンを増し増しにするのもいいと思います。

ところで、みなさんはアップルパイのシナモンは、アリ派ですか? ナシ派ですか?

日本では、シナモン入りのアップルパイは苦手!という声が少なからずあるようです。東京の某アップルパイ専門店では、シナモン不使用を謳ったアップルパイが定番商品の中に並んでいます。

2021年3月に刊行された書籍「弘前アップルパイレシピBOOK」には、弘前市内にある43店舗のアップルパイが紹介されています。レシピが載っていないアップルパイにも、「使用しているりんごの品種」、「甘味」「酸味」の度合いのほか、「シナモン」の強弱が5段階で明記されていて、数えてみると、なんと43品のアップルパイの中でシナモン不使用は23品もありました。うち1品は珈琲店で提供されているもので、アップルパイの材料にシナモンは入っていませんが、食べる時にお好みでかける(かけなくてもいい)タイプでした。

私は三沢米軍基地の近くで育ったので、アップルパイといえば、たっぷりとシナモンが効いたアメリカンスタイルに馴染みがあります。シナモンは必ず入っているものという感覚があったので、弘前のアップルパイが半数以上もシナモン無しとは、ちょっと驚きでした。確かにシナモンのあの独特の風味は、食べ慣れないとおいしいとは感じにくいかもしれません。かくいう私も幼い頃はシナモンが苦手でした。しかし、いつしかシナモンの風味をおいしいと感じるようになっていました。シナモンが効いたアップルパイが原風景にあるからかもしれません。

ちなみに、シナモンは「桂皮」という生薬名で漢方薬に多用されています。風邪のひきはじめに服用する「葛根湯」をはじめ、解熱鎮痛薬、消炎薬、保健強壮薬、婦人薬とみなされる処方にも高頻度で配合されています。

さて、話を「アップルパイ」に戻します。りんごポリフェノールは薄毛対策によいという研究報告があり、シナモンには血行不良による薄毛対策によい成分が含まれています。ストレスフルで、高齢化も進んでいる日本では、年齢性別を問わず薄毛で悩んでいる方が少なくないのだとか。心当たりがある方は、皮付きのりんごとシナモンをたっぷりつかったホットアップルパイをおやつにいかがでしょう?

2022/6/9

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