vol.15 また会う日まで、おわカレーです

春の予感が見え隠れする年度末は、卒業シーズンでもあります。過去にもご紹介していますが、ことしも、大学を卒業するアルバイトスタッフのためのお疲れさま会を催しました。

毎年思うのですが、弘前大学の学生は真面目で優秀です。学業はもちろんですが、部活動(サークル)もきちんと取り組んで、卒業論文も仕上げた上に、第一志望の会社に合格するのですからたいしたものです。就職活動中はアルバイトが休みがちになるので、私は苦労するのですが、その時期以外はとても助けてられているので、やはり応援したい気持ちで見守ってきました。

安い時給なのに、辞めずに最後まで働いてくれてありがとう、とねぎらうつもりが、反対にお礼のお手紙やプレゼントをいただいて、涙腺はゆるみっぱなしです。
「見てみてください!」とみんなから促され、包装紙をガサガサガサ。
開けてみると、
「あれ?」
中から出てきたのは、なんと、カレー皿!

「……カレー?」
 卒業生「はい、カレー専用のお皿です!」
 私「……すし屋なのに?」
 卒業生「はい、カレー専用のスプーンもついています!」
 卒業生「これで、おいしいカレー食べてくださいね!」

本当に面白い子たちです。こうして、おしゃれなカレー皿&スプーン、二人分がわが家の食器棚に仲間入りしました。

せっかく専用の食器をいただいたのだから、記念すべき初盛りカレーはどんなのを作ろうかなぁ、と考えていた折、思い出したものがありました。

『直火焼製法 りんご市場のカレー・ルー(以下市場ルー)』です。

実は、昨年の「弘前市場まつり」で、景品でいただいていたのです!

市場まつりといえば、年に一度、初冬に行われる津軽の食の祭典です。模擬競り大会やカニの大鍋ふるまい、マグロの解体ショーなど、イベントが目白押し。さらに、新鮮な農林水産品が、その日限りの特価で買えるとあって、早朝から多くの人が詰めかけます。

子どもが参加できるゲームなどもあり、わが家もそこで加工品や果物、お菓子などを獲得したのですが、その中の一つに入っていたのです。

りんご市場のカレー・ルー
市場まつりの景品「りんご市場のカレー・ルー」。しっとりした粉状タイプです。封を開けると、食欲そそるスパイスの香りが広がります

くしくも、特別なルーと食器が出合い、カレー作りがスタートしました。

市場ルーは、日本一のりんご市場である「弘果弘前中央青果」が、生産者らとともに開発したオリジナル商品です。パッケージには、契約栽培の栄黄雅(えいこうが)使用と記されています。

今回の材料は、牛肉と旬の新玉ねぎのみ。お肉は塊で購入し、大きめにカットします。新玉ねぎは、ほかの野菜を入れない分、たっぷり4個スライスして、じっくりと炒めました。

記載されている量の水を入れ、煮込んで寝かせることを二晩繰り返して、ついに市場ルーを投入! 驚くほど溶けが良いです。ダマにならずに、さらさらとなじんでいきます。とろみがつくまで、しばし煮込めば完成です。

初体験の市場カレーは、とってもまろやか。香辛料の刺激的な辛味やしびれはなく、家庭的でほっとする味です。ごろっと大きい牛肉に、新玉ねぎの甘みが効いたルーがたっぷりからんで、食べ応え抜群。家族にも大好評でした。

市販のルーを、独自でアレンジするのは好きではないのですが、これはアリですね。ベースが甘いので、辛いのが好きな方はスパイスをたっぷり入れてみては。煮込むときの水を、ブイヨンや野菜ジュースにかえたり、トッピングを工夫するなどしても、ワンランク上の味が期待できそうです。

市場ルーは、スーパーなどで購入できます。そうそう、青森に来て「カレーが安いなぁ」と思ったのですが、ルーの消費量が多いのも青森県の特徴です。カレー好きな県民が作った、こだわりのルー。ぜひ、地元の食材と併せてお試しください。

予想以上の出来に、家族で興奮した市場カレー
予想以上の出来に、家族で興奮した市場カレー。使う食器も「カレーのためのスプーン」と銘打つだけあって、一段とおいしさが増した気がしました

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さて、このエッセイもこの春で一区切りつくこととなりました。これまでお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとうございます。

たわいない日常を、ほそぼそとつづってきただけなのですが、時折「女将さん、エッセイ読みましたよ」などと、声をかけられることがあったりして、気恥ずかしい思いでした。また、遠方に住む友人や先輩・後輩たちが、感想を送ってくれることもありました。温かい言葉が励みになり、喜びとなりました。

もう少しまめに筆を走らせることができればよかったのですが、仕事との両立のために、辛抱強くお待ちいただいたサイト運営スタッフのみなさまには、長らくご理解をいただき心から感謝しています。

そして、原稿を作成するにあたって、しばしば一人の時間を与えてくれた家族にもありがとうと伝えたいです。写真撮影を手伝ってもらったり、試食に協力してもらったり……。いや、食べることに関しては、むしろ積極的に参加してくれていたような……? 結局は、家族みんなでりんごライフを楽しんでいたってことですね。

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「ご試食コラム」に引き続き、エッセイのお話をいただいたときは「りんごをテーマに」ということだったので、内容に必ずりんごが入っていたのですが、りんご以外にも青森にはたくさんの魅力があると感じています。

結婚して、転勤をして、津軽に移り住むことになるなど、まったくもって想像していなかった十数年前、私はある情報誌の青森版の担当となり、ライターとして県内全域を駆け巡っていました。社用車のコルトに、カメラと三脚と紙とペン。それに、お風呂セットと翌日のパンツを詰め込んで、誌面に載せる特集記事や広告記事の取材をしていました。

振り返れば、そのころから「青森のおいしいもの探し」は始まっていたのですね。仕事の合間に食べ歩いた地元グルメは、今でも覚えています。

下北のソウルフード「大湊吉田ベーカリーのアンバターサンド」。お総菜天国八戸の「つききんのからあげ」や「むつ食品のグラタンフライ」。菜の花畑を眺めながら食べた横浜の「生はちみつ」。浅虫に向かうときには必ず立ち寄った「うとうのシェイク」や、おばちゃんがふるまってくれた「若生おにぎり」。名前はなかったけれど、碇ケ関の達人が漬ける色鮮やかな漬物や、十和田のダチョウの刺身。市浦牛のリブステーキ、しじみラーメン、しじみスパゲッティー、しじみカレーの4品を同時にリポートすることになって、胃袋が「十三湖の宝石箱や~」となったあの日……。

グルメだけではないです。温泉も相当行きましたよ。青森と言えば、温泉地数、泉源数ともに国内トップクラス! 「ビジネスホテルのお風呂になんか入れるかー!」と言わんばかりに、多種多様なお風呂を満喫しまくりました。

七戸での銭湯の帰り。住宅街の中に赤々と燃える一角を見つけました。「まさか、火事?」と誘われて行くと、夜空を突き抜けるようなツツジの山が突如現れて、絶句したのを覚えています。灯篭の明かりが花の色彩をくっきりと浮かび上がらせ、辺り一面が朱色に染まっていました。あんなに美しい花の夜景はみたことがありません。

また別のときには、脇野沢での取材後、どうしても仏ヶ浦に行ってみたくて、車で陸奥湾沿いを北上し、パンプスのまま波打ち際まで下りて行ったこともありました。

あそこで目にする光景は、同じようなものを見たことがないので、どうにも表現のしようがありません。海の色や岩石の美しさに、鳥肌が立ったことがありますか。写真やポスターでは得られない本物ならではの息吹、衝撃、不可思議さ、すべてが胸に突き刺さりました。その後、脇野沢に戻って、まぶたに焼き付いたものを反すうしながら、長いこと温泉に浸かりました。

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ああ、止まらない。こうやって書いていると、次から次へとどんどん溢れてきて、止まらなくなってしまいます。きっと、食だけでなく、温泉も、絶景も、ハプニングも、歩き回って体験することすべてが絡み合って、心に刻まれているからです。

私はよく「住むのは大変だけど、遊びに来るにはこんなに面白いところはないよ」と青森を紹介してきました。地元のみなさん、ごめんなさい。ただ、旅行者(出張含む)から県民へと立場が変わって、それが正直に感じるところです。

生活していくには不便なところが多くあります。けれども、同じくらい良いところがあって、それをもっともっと伝えていきたい。だから、このエッセイも、地元の方へというよりは、自然と県外の方に向けて発信していたように思えます。

津軽に移り住んでもうすぐ7年。その間に子どもは大きくなり、私も夫も30代から40代になりました。津軽弁も聞き取れるようになりましたし、お友だちもたくさんできました。あっという間に思えても、時間は確実に過ぎているのですね。

だけど、まだ知りえないことがあるような気がします。今は仕事と家事と育児に奔走する日々でも、そのうちまた、持ち前の好奇心と行動力を発揮して走り出すでしょう。

いつか、機会があったらお伝えしたいですね。私の中に大量にストックされている、りんごだけではない、津軽だけでもない、青森の素敵で楽しいお話を。

その日まで、みなさま、どうかお元気で。

2019/3/22

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プロフィール

上原 香織

盛岡市生まれ。土手町「鮨たむら」女将。出版社、広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。結婚、夫の転勤を機に弘前市に転居する。現在は夫婦ですし店を切り盛りしながら、青森のおいしいものを探索中。趣味は観光と登山。一児の母。
「鮨たむら」の店舗情報http://www.seijiro.jp/sushitamura/index.html

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