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初秋の恵み "早生系ふじ"

kougyoku_txt_title_c.jpg          ※上段左より「昴林」・「ひろさきふじ」、下段左より「涼香の季節」・「やたか」・「紅将軍」

 

 植物にはしばしば、紫外線などの影響で細胞に特別変異が起こり、一本の枝や茎だけに元とは異なる形質があらわれるという、枝変わり(えだがわり)という現象が生じます。そしてりんごの品種の中にも、この枝変わりによって誕生したものがいくつか存在し、「早生系ふじ」はその中に含まれます。りんごの枝変わりには早熟系や着色系などがありますが、「早生系ふじ」は「ふじ」よりも早く成熟します。つまり「早生系ふじ」は「ふじ」のいわゆる早熟系枝変わりの品種の総称なのです。「早生系ふじ」に属する品種としては、「ひろさきふじ」「やたか」「昴林(こうりん)」「紅将軍(べにしょうぐん」「涼香(りょうか)の季節」等が挙げられます。

 

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 「ひろさきふじ」は、1984年青森県弘前市の大鰐勝四郎氏が自身のりんご園で発見しました。その後の普及によって生産量が増大し、現在では「早生系ふじ」の代名詞といっても過言ではありません。果色は濃紅色で、最初縞状に色づきますが、色が濃くなるにつれ縞は不明瞭になっていきます。果形は「ふじ」よりも丸みを帯びています。酸味が少なくて高糖度で蜜が入りやすく、果肉は「ふじ」に比べると柔らかめで果汁がたっぷりです。

 

  

 

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 「やたか」は、 1982年秋田県横手市(旧平鹿郡)増田町の平良木忠男氏が発見し、翌年から育成を試み3年後の1985年に初結実、そして1987年に父・本人・妻の名前から一文字づつ取り「やたか」という名前で品種登録されました。赤い縞がくっきり入り、「ふじ」よりも大ぶりです。甘さ強めで酸味は弱く、黄白色の果肉には蜜が細かくちりばめたように入ることもあります。

 

 

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 「昴林」は、福島の民間農場で発見された後山形県の種苗会社が増殖と普及に尽力したといわれ、現在青森県内でも広く栽培されている人気の品種です。大玉で果皮は着色が良く、下の方まで真っ赤に色づきます。甘さと酸味のバランスが絶妙で、果肉は緻密で固く非常に多汁、さらに完熟すると蜜が入るものもあります。

 

 

 

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 「紅将軍」は、前述の「やたか」がさらに枝変わりした品種で、山形県東根市の矢萩良蔵氏が育成し、1993年に品種登録されました。果実は「ふじ」より大玉で、果面には「やたか」や「ふじ」のような鮮明な縞は入らず全面赤色になります。果肉は多汁で蜜が入り、「ふじ」に比べて柔らかな優しい歯触りです。また、完熟果では「ふじ」の親品種である「デリシャス」に似た良い香りがします。

 

 

 

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 「涼香の季節」は、1981年山形県南陽市の船中和孝氏が自園の「ふじ」と「スターキング」の混植園で発見し、以降増殖を行いながら特性調査を継続した後、山形県の種苗会社が1999年に品種登録した比較的新しく誕生したりんごです。果実は大玉で果形は長円形、果皮は全面に赤色に着色しやすく、果肉は淡黄色で蜜入りが多く、甘さと酸味がほどよく調和しています。また、身が締まって歯応えが良く、果汁が非常に多いのも特徴です。

 

 

 これら「早生系ふじ」は、10月になると一斉に収穫が始まり、11月に収穫を迎える晩生種「ふじ」に似た味を1ヶ月以上早く楽しめるのが最大の魅力です。とはいえ、それぞれ少しずつ違った味わいを持っているため、何種類か食べ比べて自分の好みの味を見つけるのもいいでしょう。いずれも市場に出回る期間が短く、あたかも駆け足で通り過ぎる北国の秋のような、限られた旬の味覚といえます。

 

 

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