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第16回 2019年産「ふじ」の出来栄え

●「ふじ」の収穫時期

 リンゴは十分に味をのせて「旬の味」として供給する一方、貯蔵リンゴの供給も重要である。収穫時期は果実品質、貯蔵性に大きく影響するので、収穫期の決め方は慎重に行うべきである。

 収穫始めの目安として、満開日からの日数がある。「ふじ」の場合、満開日(黒石)の平年値は5月13日で、有袋果は満開日からの日数170日である10月30日、無袋果は満開日からの日数175日の11月4日が収穫始めとなる。「ふじ」の収穫時の標準指標を表1に、収穫時期と販売記事を表2に示した。

 しかし、収穫時期は地域、その年の気象、栽培管理などによって多少のずれがあるので、果実の熟度を調査して決定する。

 黒石(青森県産業技術センターりんご研究所)における熟度調査の結果、2019年産「ふじ」の収穫始めは有袋果で10月30日頃、無袋果で11月4日頃であった。なお、2019年の「ふじ」の満開日は平年より3日早い5月10日であった。

(表1)「ふじ」の収穫時の標準指標

食味
(1~5)
糖度
(%)
ヨード反応
(0~5)
蜜入り程度
(%)
硬度
(ポンド)
有袋 3以上 13以上 2程度 1程度 14~16
無袋 4以上 13.5以上 2以下 2以上 13~16

注)食味:3はやや未熟であるが、まあまあ食べられる(品種特有の風味が出始めの時期)、4は良好、5は非常に良好
  糖度:屈折計示度
  ヨード反応:2は20%程度の染色
  蜜入り程度:1は極小、2は小
  硬度:硬度計(7/16インチプランジャー)

(表2)「ふじ」の収穫時期と販売時期

収穫時期 販売時期
普通冷蔵 CA冷蔵
有袋 10月30日~11月10日 4~5月 4~7月
無袋 11月4日~10日 3月末まで 2~3月
11月11日~15日 1月末まで

●2019年産「ふじ」の果実品質

 黒石市にあるりんご研究所では長年にわたり、早生種、中生・晩生種の果実熟度の進み具合を調査しているが、2019年産「ふじ」の有袋果(10月31日収穫)、無袋果(11月6日収穫)の果実品質は表3の通りである。

 4月から8月中旬まで続いた少雨や7月後半からの猛暑の影響で、有袋果の果重は平年比94.4%の321g、無袋果の果重は平年比96.0%の338gとなった。

 有袋果の糖度は14.9%、平年より1.3%高く、無袋果の糖度は16.2%と平年より1.8%高くなった。2019年産「ふじ」が美味しいということを示すものである。

 有袋果、無袋果とも酸度、ヨードでんぷん反応指数及び着色指数が高く、硬度は低かった。蜜果率は同程度、蜜程度はやや低かった。

(表3)2019年産「ふじ」の果実品質(黒石:りんご研究所)

有袋果(10月31日収穫) 無袋果(11月6日収穫)
2019年 平年 前年 2019年 平年 前年
果重
(g)
321 340 343 338 352 355
糖度
(%)
14.9 13.6 12.6 16.2 14.4 13.7
酸度
(g/100ml)
0.399 0.376 0.283 0.444 0.392 0.281
硬度
(ポンド)
14.1 15.2 14.1 13.5 15.1 14.1
ヨード反応
(0~5)
2.6 2.2 1.9 2.6 1.7 1.4
着色指数
(0~5)
4.2 4.0 4.0 3.9 3.6 3.8
蜜果率
(%)
100 85 75 100 99 100
蜜程度
(0~4)
0.7 1.1 0.8 2.0 2.3 2.0

注)有袋果:2003~2018年までの16年平均
  無袋果:1996~2015年までの20年平均

●「ふじ」の糖度と日照時間

 りんご研究所は、2009年から2019年の11年間における11月6日の「ふじ無袋果」の糖度とそれぞれの年における6月から9月の総日照時間との関係を検討した。

 11年間で糖度が最も高かったのは2019年の16.2%で、最も低かったのは2013年、2018年の13.7%であった。平均は14.6%であった。6月から9月の総日照時間の平均は676.6時間であるが、最長は2019年の804.0時間、最短は2009年の546.7時間で257時間の差があった。

(図1)「ふじ」無袋果の糖度と日照時間(りんご研究所)

(図1)「ふじ」無袋果の糖度と日照時間(りんご研究所)

 11年間における「ふじ無袋果」の糖度と6月から9月の総日照時間との間には図1にみられるような有意な正の相関が認められた。2019年産「ふじ」が美味しいと言われる大きな要因として、6月から9月の総日照時間の長かったことがあげられる。

●2019年産「ふじ」の蜜

 熟度調査の結果を見ると、無袋果の蜜入り程度が収穫時の標準指標ある2以上を上回るのは11月12日で、平年(11月6日)より遅かった。糖度が標準指標の13.5%以上になったのは、平年が10月25日なのに、2019年産は10月13日に14.1%になった。10月13日時点での蜜入り程度は0であり、2019年産は糖度が早く上昇したにもかかわらず、蜜の入りが遅れる傾向にあった。

 2019年産「ふじ」は有袋果、無袋果とも糖度が高いのに、蜜の入りが遅れた要因の一つとしてヨードでんぷん反応が平年より高かったことが関係しているかもしれない。

(2019/12/26)

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プロフィール

一木 茂

元青森県りんご試験場長。現在はりんごについて広めるべく、筆を執る。

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