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音楽ライター・オラシオの
「りんごと音楽」
~ りんごにまつわるエトセトラ ~

vol.11 リンゴの季節に、リンゴの歌を

いよいよリンゴの収穫が本格的にはじまり、市場にもリンゴ箱の壁(と言うかビル状の集合体)がいくつもできています。次々と運び込まれては売れていき、この青森県から全国に運ばれていく。青森県は日本国内のリンゴ生産高の約6割近くを占めています。なのでみなさんが食べるリンゴが本県産である確率はかなり高いでしょう。遠くのどこかで、誰かがリンゴを手に取る時、そこにはリンゴを通じた青森県との「つながり」が生まれているのです。アップル・コネクションとでも呼ぶべきでしょうか。

そのアップル・コネクションをリンクさせているのは、リンゴそのものだけではありません。リンゴのことを歌った歌もあります。歌はヴィジュアルではない分、想像を抱きやすいですよね。歌詞にリンゴが登場すれば、聴いた人は自然にリンゴやリンゴ畑の風景に想いを馳せるのではないでしょうか。その時たくさんの人と青森県が結ばれる、心のアップル・コネクションが開通しているのです。例えば津軽民謡の「りんご節」とか「りんご追分」、サトウハチロー作詞の「りんごの歌」などはアップル・ソングとして有名なものと言えるでしょう。まあ、ひょっとしたらゲスの極み乙女。の「シアワセ林檎」でも青森県に想いを馳せる人がいるのかも知れませんよね(笑)

日本のディーヴァのひとりUAによるりんご追分

ところで、青森は日本で最大のリンゴの生産地ですが、世界だとどういう国が主な生産国なのでしょうか。一位から順に、中国、アメリカ、トルコ、ポーランド、インドです。中国って、あまりリンゴのイメージが強くないのですが、地理的には同じアジアにあるので、青森県と似通った気候の土地の面積も大きそう。なので意外ではあるものの、納得ですよね。トルコ、インドなどもアジアですからまあそうなのかなという感じですが、北米のアメリカと中欧のポーランドもちょっと意外ですね。そして、もっと意外なことに我が日本はなんと16位でした。

では、そんなリンゴ生産地の各国には、心のアップル・コネクションを作り出すリンゴの歌はあるでしょうか? ちょっと調べてみました。

中国
ものすごいヒット曲がありました。男性コメディアン・コンビ「筷子兄弟」(箸の兄弟という意味らしいです)が歌う「小苹果」(小さなリンゴ)という曲です。彼らが主演のコメディ映画の主題歌なのですが、その人気は国内にとどまらず、台湾(中華民国)や韓国でもカヴァーするアーティストが出たそうです。ジャンルとしては、テクノ・ポップの延長上にあるハウスをベースにしたポップスという感じでしょうか。妙にクセになる曲です。中国のみなさんは、これを聴いて国内のリンゴ生産地に想いを馳せたんでしょうか(笑)

こちらはオリジナルのプロモーション・ビデオ。コメディアンが歌う曲らしい面白い作りになっています。

こちらは韓国の女の子4人組T-ARAが兄弟とコラボしてカヴァーしたヴァージョン。

アメリカ
古くから伝わるフォーク・ソングの「Cindy」という曲の歌詞で「I wish I was an apple,hunging on the tree 自分が樹になるリンゴの実だったらいいのに」と歌われています。この曲はエルヴィス・プレスリーやジョニー・キャッシュ、レッド・ツェッペリンのロバート・プラントなどもカヴァーしていた名曲なので、歌詞を通してリンゴをイメージしたアメリカ人はとても多かったのではないかと思います。また、最近ではネオ・ソウルの女王エリカ・バドゥの「アップル・ツリー」という曲もありました。

アメリカの歌手兼俳優リッキー・ネルソンのライヴ映像です。最初にいきなりリンゴの歌詞が出てきますよ。

こちらはエリカのアップル・ツリー。衝撃のデビュー作『バドゥイズム』に収録です。

トルコ
日本のCMでも話題になった「ジェッディン・デデン」という「メフテル」(オスマン・トルコ帝国伝統の軍楽)の超名曲があり、その歌詞に「赤いリンゴ」が出てくるのです。ここでいう赤いリンゴとはリンゴそのもののことではなくて「どうしても手に入れたいもの」という本来の意味から転じて、攻め落としたいヨーロッパ列強国についての隠喩になっていると言われています。

メフテルとして演奏した本来のものはこんな感じ。強烈です。

ロック歌手のザフェール・イシュレイェンがカヴァーしたハードロック歌謡ヴァージョン。これもある意味強烈(笑)

ポーランド
まず、とても有名な民謡に「ヴィシ・ヤブウコ」というものがあります。ヤブウコはポーランド語でリンゴという意味です。また、南西部のシロンスク地方の民謡で「チェルヴォネ・ヤブウシュコ」(赤いリンゴ)という曲もあります。民謡にリンゴを歌ったものが多いのは、青森とポーランドの共通点のひとつかもしれません。

ヴィシ・ヤブウコ、こんな曲です。リズムが独特ですが、この特徴は後にショパンが応用して自分の音楽にとりこんでいきます。

これはピョトル・バロンというサックス奏者がジャスとしてカヴァーしたもの。
このテイクが収録されたアルバム『Take One』はポーランドジャズ史上に残る名盤のひとつです。

インド
この国は公用語がヒンディー語などアルファベットを使わない言語なので英語検索が難しく、うまく調べきれませんでした。でもリンゴとインドでいろいろ調べていたら、こんな曲が見つかりました。別にリンゴのことを歌っているわけではなく、ABCをおぼえるためにA for Appleという歌詞にしているだけなのですが(笑)。映画のワンシーンっぽい動画が面白いのでご紹介しておきます。

なんか、これぞボリウッド!って感じですね。

さて、各国のリンゴの歌、いかがでしたか? もちろんちゃんと探せばもっともっとたくさんあるのでしょう。その歌詞と旋律は、世界中のリンゴ生産国の人々に心のアップル・コネクションを作らせているはず。ここでご紹介した曲が気に入ったら、次はぜひパソコンのモニターの前でリンゴをかじりながら聴き返してみてください。これからの季節、あなたの暮らしはリンゴ尽くしです!

2016/10/18

Profile

オラシオ

ポーランドジャズをこよなく愛する大阪出身の音楽ライター。現在は青森市在住。

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