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音楽ライター・オラシオの
「りんごと音楽」
~ りんごにまつわるエトセトラ ~

vol.49 アーティスティックな名前?

つい先日、八戸駅そばの産直販売所で「ほおずり」という品種を購入しました。この連載をはじめてから、できるだけたくさんの品種を食べてみようということにしていまして、このほおずりは初遭遇でした。ふじと紅玉をかけ合わせた種で、福島県育成品種第一号だそうです。

品種が新しく生まれるたびに新しい「品種名」が誕生します。たいていは「親」になった品種の名前や、形とか味の特徴から名づけられているようですが、中にはこのほおずりのように愛らしいネーミングもあります。そこでちょっと考えてみました。リンゴの品種名で、アーティストネームと同じものはないだろうか?

最初に見つけたのが「ひめかみ」「きたろう」でしょうか。対応するアーティストはそれぞれ「姫神」「喜多郎」ですね。どちらもシンセサイザーをメインにした浮遊感と瞑想感あふれる音楽性で、テレビ番組の音楽などでもたくさん起用されています。「ヒーリング」や「ニューエイジ」などという言葉で表されることも多いです。ただ、本人たちはその分類を否定すると思います。

ほおずりと同じくふじと紅玉から生まれた「ひめかみ」
※写真提供:杉山芬(かおる)さん 『青森県のりんご』著者

姫神は岩手県を活動拠点にしているユニットで、ローカルからグローバルに発信するクリエイターのはしりと言えなくもなさそうです。喜多郎はグラミー賞やゴールデングローブ賞も受賞したまさに世界的な作曲家で、NHKの「シルクロード」の音楽なども特に有名でしょう。彼が参加していた「ファー・イースト・ファミリー・バンド」も日本のロック史に名を刻む名バンドでした。

喜多郎の代表作「シルクロード」

おっと、すごいのもありました。その名も「プリンス」。2016年に亡くなった天才ミュージシャンと同じ名前ですね。優れたヴォーカリスト&ギタリストであるだけでなく、作詞作曲にアレンジ、数多くの楽器を演奏するマルチプレイヤーで、しかもダンスもできるという音楽の神に愛された超人の一人でした。その総合力の高さだけでなく、彼の音楽の魅力はブラック・ミュージックという枠組みにとらわれない幅広い音楽性。マイケル・ジャクソンがMJというアイコンを中心に様々なジャンルの才能を集めてユニジャンルなサウンドを作り出すプロジェクトだとしたら、プリンスはそれを一人でやっていたような感じ。

一部該当という感じですが「アンビシャス」もあります。こちらはギタリストのアート・リンゼイとキーボーディストのピーター・シェラーが結成したユニット、アンビシャス・ラヴァーズが当てはまりますね。リンゼイは後にブラジルの大歌手カエターノ・ヴェローゾと組んで巻き起こしたりもしました。シェラーはスイス出身なのですが、プログレ界隈ではかつて参加していたIslandというバンドの唯一のアルバム「Pictures」が大傑作として知られています。

アート・リンゼイが大きく貢献したカエターノ・ヴェローゾの名盤「シルクラドー」。坂本龍一も参加しています

この辺までは、音楽ファンじゃないと「知らない名前ばかり」と感じる方もいらっしゃるでしょう。では最後にとっておきのネタを。「ピンクレディー」です。実際の品種名は「クリプスピンク」で、ピンクレディーは世界共通の商標ということだそうです。アーティストのほうのピンク・レディーは、1970年代後半に社会現象にまで発展した女性2人のポップユニットで、まあ日本人なら誰でも名前くらいは聞いたことがありますよね。

全盛期と言えるのはわずか2年、駆け抜けるようにその活動を終えたユニットでしたが、いまだに振付を完璧に踊れるという女性も多く、ダンスが売れ行きに大きく影響するということの証明は、後のポップシーンへの大きな遺産だったのではないでしょうか。作詞:阿久悠、作編曲:都倉俊一のコンビも強力でした。ちなみに2曲目のシングル「S.O.S.」のB面は「ピンクの林檎」です。

こちらがピンクレディー。
作りたくなったらまず協会に入りましょう!
※写真提供:杉山芬(かおる)さん 『青森県のりんご』著者

僕は1974年生まれなので、ピンク・レディーが活躍した時すでにこの世に存在していました。ただ、その頃はお堅い性格の前の父と神戸で暮らしていたので、おそらく歌番組などはテレビで観ておらず、リアルタイムで彼女らを楽しんだことはありませんでした。同時期に活躍していた山口百恵もそうなのですが、僕はこの時期の日本のアーティストの音楽をほとんど知りませんし、曲も「どこかで聴いたことはあるけど・・・」くらいの認識です。今書いていて「まだ神戸にいたからだ」とやっとその理由に思い当たりました(笑)

ただ、そんな僕でも「まったく知らないというわけではない」というところがすごいし、それくらいじゃないと後世に残ったと言えないのだとも思います。僕が知っているピンク・レディーのネタでこれはすごいなあと思ったのが阿久悠が書いた「透明人間あらわるあらわる 嘘をいっては困ります あらわれないのが透明人間です」という歌詞。あっと言う間に聴き手の認識を引っくり返す強引な展開に笑ってしまいます。西田敏行がピアノを弾きながら歌う「もしもピアノが弾けたなら」と並ぶ2大ツッコミ必至ネタですね。

一つの「産業」に発展するポップ・プロジェクトのはしり?ピンク・レディーのほぼすべてを知ることができるベストアルバム

今回はアーティストネームから見たリンゴの品種名でした。「よあそび」とか「キング・クリムゾン」(クリムゾンは「真紅」という意味)とか今後出てきてもいいような気もしますけど、どうなんでしょうね。ちなみにピンクレディーは日本では日本ピンクレディー協会の会員にならないと生産販売することはできません。商標の使用権上の問題によるマジメなものなんですが、なんだかちょっとファンクラブみたいですね。

2022/11/29

Profile

オラシオ

ポーランドジャズをこよなく愛する大阪出身の音楽ライター。現在は青森市在住。

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