音楽ライター・オラシオの
「りんごと音楽」
~ りんごにまつわるエトセトラ ~

vol.36 やがてリンゴはベトナムに渡る

最近の朝の青森ローカルニュースで「検疫の条件が緩和されたので、ベトナムにリンゴ売り込みを開始」というトピックがありました。正確に言うと、それは夕方のニュースのお知らせでトピックだけ紹介していたものです。結局夕方にそのニュースを観られなかったので詳細は知らないのですが(すみません)、中国や台湾、インドに次いで今度はベトナムかあと思いました。

ベトナムに輸出計画中のサンふじ

ベトナムって、日本人観光客もけっこう行ってますし同じアジアですが、その文化については知らないことがまだまだたくさんあるような気がします。僕にとってベトナムと言えばまずは「フォー」です。米を使った平べったくて白い麺。はじめてフォーを食べたのは大学卒業後6年間住んだ東京でのことだったかなあ。

6年間住み続けたアパートの最寄り駅は地下鉄丸ノ内線東高円寺駅で、駅のすぐ近くに「リトルアジア」というアジア料理屋さんがあって、そこはベトナム料理をはじめカンボジア、ミャンマー、インドネシア、マレーシアなどアジアの色んな国の料理を食べさせてくれるお店でした。安くておいしくて、彼女や友人や、僕と同じく上京してきて働いている大学の後輩たちとよく行ったものです。まあ20代の青春の思い出ってやつです。あ、ちなみにそのお店はまだあるはずなので、上京の際はぜひ行ってみてください。今でも僕にとって最高のエスニック料理のお店です。

女性だと伝統の民俗衣装「アオザイ」を思い浮かべる人も多いかもしれません。ベトナムの女子高生の制服は白いアオザイが採用されることがほとんどだそう。ちなみにアオザイは女性だけのものではなく、男性用もあります。ただし、女性用とくらべてあまり見ることは多くないとのこと。伝統衣装と言いつつ、アオザイの特徴は基本的にオーダーメイドであることでしょう。と言うと体形に合ったものを仕立ててくれそうでいいような気がしますが、アオザイの場合は「体に合いすぎていること」が問題です。すごくぴったりしたタイトな服なため、一度作ってもらうとずっとその体形でいなければ着れなくなってしまうのです。ベトナム女性もけっこう大変そう。

僕は人の名前から「どこの国の人」とか「何々系の人」とかを当てる遊びが好きです。例えばファミリーネームの最後が -skiとなっていればポーランド人です。他国人の場合ならポーランドのルーツを持っている人だと思います。スラヴ系の名字は語尾が-skyとなるものが多く、日本では「~スキー」とカナ表記されます。ただしポーランドだけは-skiなのですぐ見分けがつくのです。逆に-skyはロシアだったりベラルーシだったりチェコだったりいろいろなので国の判断がつきにくい。

つい先日アメリカンフットボールのスーパーボウルでタンパベイ・バッカニアーズが優勝しましたが、タッチダウンレシーヴもしたタイトエンド、ロブ・グロンコウスキー Rob Gronkowskiはおそらくポーランド系だと想像がつきます。名字をポーランド語読みしたらグロンコフスキになります。レナード・バーンスタイン作曲のミュージカルの傑作「ウエストサイドストーリー」の男性主人公がポーランド系であるように、アメリカにはポーランドからの移民がとてもたくさんいるので-ski語尾の人もちょこちょこ目にします。映画のクレジットとかでも必ず一人はいると思うので、今度探してみてください。

ウエスト・サイド物語よりCool。歌い踊っているのはポーランド系移民の少年ギャング団ジェッツ

だいぶ回り道しましたが-skiと同じように、これは必ずベトナム関係の人だとわかる名前があります。Nguyen グエンです。僕がこの名前を知ったのはフランスのジャズにハマっていた時。フランスのジャズシーンで活躍する鬼才ギタリストにNguyên Lê グエン・レという人がいたからです。彼はベトナム系フランス人で、見た目は完全にアジア人。ベトナムは19世紀後半からしばらくフランスの植民地だったので、人の行き来も盛んなのでしょう。80~90年代にかけてプログレッシヴロック経由でフレンチジャズにはまった人たちにとって、グエン・レはヒーローの一人。当時の名盤の数々によく参加して、その独特のギターワークを披露していたからです。

彼のギターの特徴はロックやメタルのセンスをがっつり取り込んだ尖ったサウンドと奔放なフレーズで、プログレのような複雑な構造とフリージャズのアヴァンギャルド性を併せ持つフレンチジャズのコンポジションとむちゃくちゃ相性が良かった。そんな彼も、作曲者としてはだんだんルーツ探求がはじまり、ベトナムを含むアジアの伝統音楽やエスノな要素を大々的にミックスさせるようになりました。ドイツのレーベルACT Musicの「Saiyuki」や「Songs of Freedom」はその路線の傑作です。

アフリカやアジア音楽的視点から英米ヒット曲を捉え直したハチャメチャカヴァーアルバムSongs of Freedom

ベトナムの伝統音楽と言えば有名なのは水上人形劇でしょうか。伝統楽器アンサンブルによる生演奏をバックに水上で人形が所狭しと動き回る不思議な形式のもの。バックヤードから遠隔で人形を操作する仕組みは門外不出と言われており、その詳細は今も秘密のまま。高校時代に世界各地の民俗音楽にハマっていた頃があり、その時知りました。

ハノイの観光チャンネルが公開している水上人形劇の動画。雰囲気つかめますか?

こんな感じで、これからリンゴを通じてもっと仲良くなれそうな国ベトナムのあれこれについて書いてみました。いつかベトナムの人が「日本のリンゴおいしいねえ」と言うのを聞くことができるかな?

2021/3/5

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オラシオ

ポーランドジャズをこよなく愛する大阪出身の音楽ライター。現在は青森市在住。

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