りんご「トキ」を食べてみました
「トキ」(弘前市相馬地区産)
佐渡島にいる鳥のトキからきた名前で、新潟県生まれの品種かと思いきや、人名が由来で、しかも青森県生まれだと知ってびっくりした記憶があります。
「トキ」は、青森県五所川原市の土岐傳四郎(とき・でんしろう)さんが育成した品種です。土岐さんが育成したから「トキ」という名前が付きました。鳥のトキは関係ありません。
種子親「王林」 × 花粉親「ふじ」から生まれました。
現代風に言えば、完全に親ガチャに成功したりんごと言えるのではないでしょうか。
「王林」と「ふじ」の子ども、美味しいに決まっています。
果皮は淡黄色で、陽光面に薄い赤が着色します。
きめ細かい繊維質かつ程よい硬さで歯応えも抜群。
「トキ」ならではの芳醇でトロピカルな香り、強い甘味があり、シンプルにおいしいりんごです。
面白いのが、熟度によって果皮の色が露骨に違うことです。
スーパーや直売所を観察すると、場所によって売っている「トキ」の色が全く異なります。
黄色になればなるほど熟れていると言えます。
甘味が強く、トキ特有の芳醇な風味を楽しみたい人は、完熟の「トキ」を食べるべきです。
酸味とパキッとした食感を重視したい人は、未熟な「トキ」を選択するのがいいでしょう。
さまざまな熟度のものを試しに食べてみて、自分好みを探してみるのも楽しみの一つではないでしょうか。
また、熟度によって、見た目、味、風味、食感が大きく異なるので、完熟の黄色い「トキ」は、樹上完熟トキのような名称をつけて、差別化して販売してもいいと思います。
近年、「トキ」は海外での需要を伸ばしていますが、5年前に適切な収穫時期より早くとれた「トキ」が台湾に輸出され、未熟で味が悪いと評価が低下したことが問題となりました。
需要と供給で価格が決定されるメカニズムである以上、5年前の問題は繰り返されるのではないかと思います。
なぜなら、生産者目線で考えると、
早く出荷すればするほど供給量が少ないため高く売れ、
適切な収穫期のりんごは高品質だが供給量が多いため安く買われるからです。
そりゃあ、汗水流して作ったりんご、高く売りたいですよね。
選果の機械化・大規模化が進み、出荷する時期に左右されず、品質(糖度、果皮など)に応じて価格が上下する価格決定メカニズムになるしか、この問題は解決されないでしょう。
消費者にできることは、高品質なりんごを作る生産者から直接購入する。もしくは、高品質なりんごを仕入れる販売者から購入するのがいいでしょう。
結果的に、いいものを作りたい・売りたいというプライドを持った生産者・販売者を応援することにつながります。
【穗坂修基(ほさかもとき)】
弘前市相馬地区の地域おこし協力隊。
生まれも育ちも横浜市。Iターン者。
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